2013年04月21日

~ その壱、紅い雪。

そのテレビ放送は、不思議だった。

《……プン》

テレビが、小さな音を立てて、ついた。

今は夜中の二時。
外は、真っ暗。月や星さえも眠っている。そんな時間帯。
二月という寒い季節もまた闇を加速させる。
凛と張り詰めた凍りつく深淵。

普通、この手の経験は、真夏の暑い日と相場が決まっている。
が、私に舞い降りた非日常は、時雨れた冬の夜だった。
呼応するよう画面の中で、雪がちらつき始めた。
まるで、これからを指し示すよう。

画面の真ん中に日本人形が一つ、ポツンと在った。

艶やかな黒髪を寒風で揺らしながら。
しかし遠いアングル映像の為、表情を確認する事ができない。
どことなく、笑っている。そんな気もするが。

しかし私は、テレビが自然とついた不自然さに気づかなかった。

憂鬱な思いに襲われていたから。

私の名前は、高村麻弥(たかむら まや)。
現在、高校に通う女子高生。今年の四月から高校三年生になる。
後、三ヶ月もすれば卒業後の進路を考えなくてならない。
進路(ゆくさき)を考えると気が滅入ったのだ。

受験とは何故、こうも陰鬱な気分にさせるのだろう。
冗談だが、死にたいと思わせるくらいに。

とにかく、見えない先を不安に思い、
テレビが自然とついた事にまったく気づかなかった。

「ねぇ。亜紀。亜紀は進路、もう決めた?」

だから何気なく、隣にいる友達に聞いた。
そう。今、隣には、友達がいる。

西田亜紀(にしだ あき)。
彼女とは、無二の親友。小学校の頃からの幼馴染だ。
成績は、私と同じくらいの中の下。

だから彼女もまた進路を決めかねている。

「ん。麻弥」

考えたくない進路を聞かれ、
思いあぐねたのか言葉を詰まらせたと、私は思った。

「なんで、テレビがついてるの?」

しかし、違った。
続く言葉で、彼女は脈絡がない質問をしたから。
進路の事など、いや、私の話など聞いていなかったのだ。

彼女は、テレビに釘付けになっていた。

私の事など気にもせず、食い入るように画面に注目していた。
私は、彼女の態度に不満を覚えた。
が、それも瞬きする間。

「これは……、軽くなるお話。とても軽くなるお話」

と、出し抜けにテレビから重苦しいナレーションが流れたのだ。
まるで、世の果てから誘うような冷たい女の声で。

唐突!
カクカクと、不自然に日本人形が画面の前面に来た。
来たとは、歩いて来たかのように思えたから。
しかし、決して足を動かさず。

背景にちらついていた雪が、吹雪へと変わる。
ただし、今まで降っていた白い雪がではなく、紅い雪が。
雪に何かが混じっていたのだ。

それは……。

~ その壱、紅い雪、了。

posted by 四草めぐる at 22:46| Comment(0) | ホラー小説 | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。