2013年04月21日

~ その参、何か。

《ドサッ》

私が亜紀に答えれなかった時。
亜紀が吐露した瞬間。

何かが、オちてきた。

私と亜紀の後ろ。
二人の視界が及ばぬ真後ろのスペースに。
とても重そうな、何かが。

「麻弥!」

亜紀が、私を呼ぶ。
顔を向けずに。

横を向けば、何かが視界に入るから。
怖くて、首を動かせないのだ。
微々たるとも。

彼女の首筋に力が入って、冷や汗が伝わっている。
私は横目で、確認する事できた。

何かを見たら、そこで終わってしまう。
何かが、終わってしまうのだ。

彼女の汗を目撃して、強くそう思った。
私もまた動けなくなっていた。

「そして! 軽くなるお話!」

急にナレーションのボリュームが上がった。
耳をつんざくような声量。さらに錆付いた鉄の塊のように重々しく。
深い闇の底から伸びる真っ白な手が私たちを引きずり込んだ。
恐怖という奈落へと。

私と亜紀は、押し並べて気圧された。

《ズリ……、ズリ……》

オちてきた何かが。
何かが、私たちに向かって、近づいてくる。
這いずるような鈍い音をたてつつ。

「軽くなるお話」

再度、ナレーションが告げる。

告げると同時。
今まで、うつむき顔が見えなかった人形の表情が表れた。
目をカッと見開き、歯を剥き出し大口を開けて。

ニタリっ。

と、笑っている表情が。
見開かれた人形の目は、殺意に満ちていた。

「軽くなりたいのは……、」

亜紀は半狂乱。
顔面蒼白で、涙を流しながらガタガタと震え、爪を噛み続けている。
ただ、もうどうしていいのか分からずに。

「どっち?」

怖がっては、ダメだ。
と私は、正気を保とうと努めた。
もし、亜紀のように恐怖に支配されてしまったら。

「もうダメ。耐えられないよ。麻弥」

亜紀が、諦め呟いた。
名前を付け加えたが、決して私にではなく自分に向かって。
それは、どうしもない絶望をよく表していた。
後、彼女は、不安を解消する為……、

振り向いた。

「キャハハハ! な~んだ」

彼女は、明るく言った。
さも大した事など無かったのだと思ったよう。
続けて……、

「ただの女の生首じゃん」

と、告げた。
朗らかに微笑みつつ。

「貴女ね」

亜紀の言葉に生首が答えた。
冷たく、どす黒く、そして深い憎悪を表し。
その声が、私の耳に粘っこく、ベタァっと貼り付いた。

~ その参、何か、了。

posted by 四草めぐる at 22:54| Comment(0) | ホラー小説 | 更新情報をチェックする
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